35年居る男と25歳の俺

今日は床屋に行った。俺が幼稚園に入る前からずっとお世話になっている床屋さん。


25歳になって、家の周りを見渡すと、景色もずいぶん変わった。
新しくなったもの。
無くなったもの。


俺が産まれた病院はあるが、遠足のおやつを買いに行った駄菓子屋は無くなった。
幼稚園はデカくなり、小学校は入りにくくなり、中学校の前の歩道橋は先週無くなった。
俺の住んでたアパートは一軒家の新築になり、最近壁の色も変わった。
家の前にあった保健所は移転し、公園ができた。が、それに伴い、老人ホームも無くなった。
空き地だった場所には家やマンションができたが、数本あった桜の木は一本しかなくなった。


でも、家の前の駐車場の柵はどんなにひん曲がっても変わらない。
家の斜め前の木は、枝が伸びて何度も切られても、今でもそこにある。
家の隣りのアパートの管理人一家は、今でも「おとなりさん」だ。


はじめてその床屋に行った日のことは今でも覚えている。
床屋さんも覚えていたらしい。
床屋さんは今の店には、俺が産まれる数年前にやってきて、それまでまた違う近くの店でやっていたという。
35年も髪を切っているそうだ。


今日は床屋さんとずいぶんしゃべった。
約30年のここらへんのこと。
子どもの頃にあった美容院は、意外にも数年しか無かったこととか、お店ができたころには、道もできてなかったこととか。


でも、家と50メートルと離れていないのに、20年通っていながら、町内会が違うため、お互いのことを案外知らないことにお互い気づいた。
不思議なものだ。