勝利の女神と敗者の男

駒大苫小牧が連覇した。
57年ぶりの快挙というが、まだ実感がわかない。
昨年の優勝は奇跡としか思えなかった。弱小の北海道が優勝するのである。
しかし、今年は、当然のような気がした。
そして、変わらなかったのは、「なんだかんだで勝つんだろう」という根拠のない確信であった。


勝負ごとは、不思議と数字とか論理とか関係なくなることがある。ただの目安でしかない。
2つのサイコロを振って出る目の和が一番出やすいのは7というのは、あくまで数学の世界であって、現実の勝負ごとに限って、7は出ないものだ。
突きつめていけば、私は科学で解決できると思っているが、現実はそれほど突きつめることを要求してしないようだ。


私が今回優勝できるかもしれない、とほぼ確信したのは、準準決勝の鳴門工戦だ。5点差を逆転するのだが、その回の攻撃、最初のバッターが2塁に暴走気味に走塁し、結果、3塁まで行った時だ。
監督も含め、ちょっと走りすぎだと思った人は多いようだ。だが、当の本人は、守備陣にスキがあるのを見逃さず走ったと言っている。
彼がよく見ていた、とも言えるが、この瞬間、誰かが背中を押したと私は思う。
結果、見事逆転勝利、そのまま、甲子園優勝というシナリオとなった。


準決勝で、大阪桐蔭と当たった。前日、平田は3本のホームランを打った男だ。しかし、この日は無安打だった。怪物でさえ、勝利の女神には勝てなかった。


駒大苫小牧は、特に目立つスター選手はいない。もちろん、全員野球なのだが、かといって、特に強みになるポイントはないように見える。でも、勝つのだ。なんだかんだで勝っていくのだ。
今日の相手のピッチャーもいいピッチャーだったが、なぜかボテボテの内野安打で加点していく、ラッキーな点の入れ方だった。


野球の知識がまるでない私にとやかく言われたくないだろうが、駒大苫小牧を見ていたら、そんな印象を受ける。
しかし、一つ言えるのは、もう北海道は高校野球ではナメられないということ。冬、グラウンドが使えなくたって野球はできるということだ。


もうひとつ大事なのは、私が試合をよく見なかったことだ。私は、違う(本当の意味の)マイナスイオンを放出している男だ。札幌ドームや円山球場などに巨人や日ハム戦をたまに見に行くことがあるが、たいてい負ける。おそらく、勝率は2割切っていると思う。
私が応援するとたいてい負けるし、降るか降らざるかという空模様の時に外に出れば、雨が降るし、人生そのものが負けている、貧乏神みたいな男なのだ。
そのことを悟っているので、今回はほとんどの試合を見なかった。隣の部屋が盛り上がっていると、やはり気になってチャンネルをかえるのだが、決まってアウトになってイニングを交代したり、同点に追いつかれたりする。
だから、相当負けないだろうという状況になってから、私は見出す。


駒大苫小牧が優勝したのは、彼らの実力によるところが大きいのだが、科学の説明できないところで、二人の女神と男が関係しているのだ。