(毛虫テロ続き)「寂寥 俺が育てたさなぎか?」

今、自分の目の前に起きた出来事にしばし呆然としていた。あまりの衝撃で、思考停止状態になった。何も手につかない、何も考えられない。
でも、この体験は書かなければならないと思う。これから体験するかもしれない人類のために。


ふだん履いているパジャマのパンツをまさぐっていたら(イヤらしいことじゃないですよ)、なんかぽろっと出てきた。
何だろ?これ。
なんか豆みたいなもので、洗濯してる時に入り込んできたゴミかなと思った。今考えると、布製品ではなかったのだが、ただのゴミだと思って、何の気なしに今のテーブルの上に置いておいた。


1センチに満たない小さなもので、何かの種子みたいなものだ。表面は乾いている。なんの危険性も感じられないので、まったく警戒感なく手元に置いておいた。
やがて、何の気なしに手でいじると、意外とやわらかいことに気付いた。


が、その瞬間だった。私の人生が180度変わった。


爪で押したら、ぷしゅっと中身が出てきた。そう「中身」なのだ。得体の知れない色した液体がぶちゅっと出てきた。


絶望した。一つの仮説が頭の中に立てられ、すぐに結論が導き出されたからだ。
これは、さなぎだ。
先日から、俺やこの部屋を苦しめてきた毛虫の次形態だ、と。


毛虫に対して、ある種の好感さえ持ちはじめてきたころに、これは何なのか。怒りさえ覚えない。まさに、絶望だ。自分の目の前には砂漠しか広がっていない。力も沸いてこない。


さなぎかどうか断定はできないが、あの液体を見たら、確実だと思う。あの得体の知れない液体。決して、人間が口にするものではない。あの色は「私は気持ち悪いから、こういう色してるんですよ〜」というのをアピールした色だ。想像するのも怖ろしい。私はさきほどから、身体のいたるところが痒い気がしている。


しかし、このさなぎはいつから私の股間にいたのだろうか。このパジャマはだいぶ前から履いている。洗濯してから、一週間くらい経つ。俺の股間で、彼はさなぎになったのか。もしかして、俺の体温を利用してさなぎになったのか。俺が育てたさなぎだったのか。
成長するならすればいいさ。なぜ、完全に成長する前に俺に晴れ姿を見せたのだ。


俺の股間で育ったのか、そもそもほんとにさなぎだったのか真相はわからない。でも、確実なのは、得体の知れない中身の怖ろしさだ。あれは、間違いなく非日常的な気持ち悪いものだ。そして、俺に絶望を味わせてくれた。


これを見た人類たちよ。パジャマのズボンのなかから、1センチに満たないほどの種子状のものが出てきたら、それは種子だと思わずに、すぐに捨てなさい。まったく危険な感じはしないが、それはかなり危険な物体だ。