その刀では斬れない

エンタの神様を久々に観た。
私はお笑いが好きだが、実際若手芸人のネタを見ても笑っていないことに気づいた。
つまらないのではない。ネタの仕組みとか練り具合など、別のところを見ているからだ。
笑いに限らず、私は「巧い」モノが好きだが、そういう意味でアンジャッシュは好きだ。彼らはおもしろいが、それ以上に巧い。


エンタの神様については、すでに論争が繰り広げられている。
初回と構成が全然違う、司会が福澤朗白石美帆、うるさい字幕…。
時間帯だけに視聴率はいいのかもしれないが、番組としてはスジが悪い。
特に字幕問題は深刻で、時に陣内智則のネタをつぶすことさえある。
はなわのガッツ伝説もいらない。


そんなわけで、なんとなく見なくなってしまった。


12日の放送は、とあるところで見た。
いつも一人で見ているから分からなかったが、正常な人は笑うのね。


エンタの神様の唯一誉められるところは、新人の発掘に積極的という点だ。
が、あまりイイものを見つけていない。
最近は波田陽区という、ギター侍を押している。
名前は知らなかったが、なんとなくネタは知っていた。
12日の放送にも彼は出ていた。
私といっしょに見ていた人は笑っていた。
「残念」とか「○○斬り」とか、耳に残ってハマっているという。
ネタを見ていて、確かに観客もそこで笑っている。お決まりのギャグというところだ。
このまま波に乗れば、流行語大賞にも選ばれそうだ。


しかし、私は全然笑えなかった。むしろ、これはまずいと思った。
そのギャグだけが先行している。
本筋の「斬る」ネタが、おどろくほど薄い。
そんなことは、とうに言われていることなのである。
「斬る」のであれば、もっと深いところまでつっこんでほしい。
毒舌になっていない。斬れていない。


波田陽区を見て、いっそう思った。
オンエアバトルから始まったお笑いブームは変わってきている。
大量生産から大量消費になっている。
芸人はどんどん捨てられていくだろう。
その時は面白いかもしれないが、そのスパンが短い。
ちゃんと実力をつけてネタをやらないと、中田カウスボタンオール阪神巨人のような、素晴らしく巧いベテランが誕生しない。


芸人のネタを見て笑う時、これはいったい何が面白いのか、考えてみるのもまた面白い。
しょっちゅう考えていると、私みたいな人間になってしまうが。