せまられてVOW

引っ越しのため、部屋を片付けているといろいろなものが出てくる。それにしても、そんなに広くない部屋なのに、こんなにモノがあるもんだな。しかも、今となってはほとんどいらないもの。こいつらは、いつの間にゴミに変身したのだろう。
いちばん、嬉しかったのは一万円札。机の引き出しに入っていた。しかも、旧札。こうやってほぼ毎日パソコンに向かっているのに、すぐ下に潜んでいたとは。もちろん、俺のお金のはずだが、こんなところに入れた記憶がない。結局はプラスマイナスゼロなのだが、私は勝手に一万円札が生えてきたことにしている。
むかついたのは、前好きだった女(=うんこ野郎)の手紙。何年か前に全部処理したはずだが、引き出しと机の間に挟まっていた。引き出しを全部出して、引き出しの奥を覗いてはじめてわかった。というか、てめえはなんてしぶてえ野郎なんだ。たまたま見つけたからいいものを、これは一生気づかない可能性だってあるぞ。今まで俺の部屋に野郎の怨念が残っていただけでも腹立たしい。もちろん、読まずに捨てた。


机の中に、少しだけ嬉しかったものが入っていた。大学の本屋で本が安く買えるクーポン券だ。たしか、本を買ったら何枚かついてきたはずだが、結構たまっている。数えてみると、ちょうど500円分だった。
しかし、大学を卒業してから何年も経つし、生協のシステムも確か変わったはずだ。この500円のクーポンは使えるのか?無視してもいいが、500円だったら文庫本も買えるしなあ。
というわけで、久しぶりに大学の本屋に行ってみた。使えないなら、何も買わずに帰ってくる予定で。


大学はまだ夏休み。今考えれば、なぜこの時期も夏休みなんだろう。高校生はとっくに勉強してるのに。でも、学生の時はこれが普通だと思っていたが。平日の夕方なのに、やたら人が少ないが、景色はほとんど変わっていなかった。
本屋にやって来た。やっぱり何も変わっていない。店員さんに使えることを確認し、本を選ぶ。


考えてみれば、本を買う行為は久しぶりだ。ということは、本を買わなくなったということか。バイト雑誌を買った記憶しかない。大学1年の頃は、アホみたいに文庫本を買いあさっていたが、インターネットをやり始めてから、活字を読みたいという欲求は満たされた。
どうせ500円しかないから、買うなら文庫か雑誌くらいだ。といっても、なかなか難しい。何を買おうか。文庫を買っても、おそらく読まないのではないだろうか。雑誌も普段読まないし、置いてある雑誌もなおさら読まない感じばかり。
何を買おうかと迷っていたら、店内に例の音楽が。夏休みなので、本屋が締まる時間が早いのだ。曲は緩やかなのに、やたら「早く決めろ」と心を煽る。それでもなかなか決まらないが、閉店時間は近づいてくる。どうしよう、えい!と手に取ったのが『VOW全書〈6〉まちのヘンなもの大カタログ (宝島社文庫)』だった。
え?それ?


私がVOWにはじめて出会ったのは、中2のころ。ある友達が学校に持って来た。今、考えれば友達はかなり最先端を行っていたと感じるのだが、当時はそんなことは全然考えもせず、一冊の本を回し読みしていたことを覚えている。その友達のことを俺は普通の人と思っていたのだが、後で聞くと、学校に行きたくないから公園に隠れていたりして、ちょっとヘンな人だった。そんなMADな友達とは全然連絡してないが、現在はどっちかだと思う。めちゃくちゃフツーか、よりDOPEか。
とにかく、その当時に学校にVOWを持って来たことと、すでにVOWを購読していた彼のセンスは評価したい。


高校時代はすっかり忘れていたが、大学に入ってから古本屋で見つけて、懐かしいなと思い、買いはじめる。すると、2冊分をまとめた文庫版も出ていることを知り、『VOW全書〈1〉まちのヘンなもの大カタログ (宝島社文庫)』から『携帯VOW―まちのヘンなもの大カタログ (宝島社文庫)』の一連のシリーズを買った。
大学を卒業してから再び忘れたのだが、今日また再会した。


はまぞうで調べてみたのだが、6が最新刊ではないようだ。書店では6しか置いてないから、これが最新刊だと思い込んでいたし、本によると、VOW全書の5が『携帯VOW―まちのヘンなもの大カタログ (宝島社文庫)』にあたるので、事実上、VOW全書の5はないのだ。複雑。
現在、文庫は『VOW全書〈8〉まちのヘンなもの大カタログ (宝島社文庫)』が最新だが、私がこの本と出会うのはいつだろうか。敢えて買いに行くこともないだろうし、でも逆に案外早いかもしれない。


それにしても、まだVOWが続いていることがすごい。まだまだネタがあるようだ。自分の知っている場所が掲載されるのも、どこか嬉しい。